近年児童福祉職の中で注目を集めている児童発達支援管理責任者(以下、児発管)ですが、果たして将来性はあるのでしょうか。
今回は様々な厚生労働省や文部科学省等のデータや法人・施設さんの児発管採用担当の方からの声をもとに、児童発達支援管理責任者(児発管)の将来性について解説していきたいと思います。
児童発達支援管理責任者の将来性
結論、児童発達支援管理責任者の将来性はあります。
以降は様々なデータや採用現場等を踏まえた、児童発達支援管理責任者の将来性がある理由や根拠を解説していきます。
児童発達支援管理責任者とは?
児発管の将来性についての説明の前に、そもそも児発管とはどんな職業かについて確認します。
児童発達支援管理責任者とは、子どもたちの発達状態やそれぞれの特性に合わせた援助を主導する専門職です。
子どもごとの個別支援計画の策定(アセスメントやモニタリングなど)、保護者さんとの対話、そして関係機関との協力が求められるなど、業務範囲は広いです。子どもたちの発達を評価し、その評価を基にして支援計画を継続的に更新していきます。
詳しく下記リンク先の記事を参照してください!
児発管の仕事内容
児童発達支援管理責任者(児発管)の主な仕事内容
児発管の仕事内容を一度整理しておきましょう。
児童発達支援管理責任者が行う主な業務には以下のようなものがあります。(事業所によって異なる場合もありますので一例です)
- ●個別支援計画の作成
-
アセスメントや支援会議の実施、モニタリングなども含みます。
個別支援計画についてはこちらの記事で解説しています。
- ●利用者の見学対応や契約業務
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施設への入所を考えている利用者さんの対応です。
- ●人材育成
-
スタッフの療育スキルアップのために指導や研修の実施も行います。
- ●保護者対応
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保護者さまへの報告や伝達も大切な仕事になります。
- ●請求業務
-
法人によっては国への請求業務を児発管が行っている場合もあります。
- ●送迎業務
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学校と施設間、自宅と施設間などの送迎を児発管が行う場合もあります。
※それぞれの業務の詳細は以下の記事でも解説しております。
児童発達支援管理責任者の将来性がある理由や根拠
では、どのような面から将来性があると言えるのでしょうか。実際のデータを参照しながら説明していきます。
児童発達支援管理責任者の将来性がある理由や根拠の要点をまとめると、以下のようになります。
- 発達障害児童の増加
- 障害児支援サービスの施設数の増加
- 人材不足
- 給与水準が高い
- 採用現場から求められている
それぞれ以下で詳しく解説していきます。
発達障害児の増加
参考資料:文部科学省資料「特別支援教育の現状」
ここ数年、発達障害児の数は増加しています。理由としては、「発達障害」に関する理解が広まっていることが考えられます。
数十年前では「怠惰」や「親のしつけ」が原因として、適切な支援を受けることが難しいことがありました。
しかし、現代では「発達障害」に関して社会での認識が進み、専門家によって診断を受ける子どもが増えてきました。
実情として、現在40人クラスのうち2〜3人は発達障害があるとされています。この増加は、発達障害に対する認知度の向上も一因となっています。
また、発達障害には注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)、自閉スペクトラム症などが含まれ、個別な対応が必要とされています。
そのため、専門的なアプローチスキルを身に着けている児発管の需要が高まっているのです。
児童発達支援・放課後等デイサービスの施設数が増えている
児童福祉法の2012年の改正以降、障害福祉施設が増加傾向にあります。
さらに、その中でも、児童発達支援管理責任者(児発管)を配置しなければならない児童発達支援・放課後等デイサービス等の施設数はより増加傾向にあります。
以下のグラフを参照すると、2018年→2024年でおよそ2倍増加しています。
参考資料:厚生労働省 統計資料「障害福祉サービス等の利用状況について」
そんな毎年増加している児発管は施設に1人必要となります。
つまり、新しい事業所が開設されるたびに、最低1名の児発管が必要となるので、需要が高いといえるでしょう。
人材不足
近年において発達障害児と児童福祉施設数双方の増加により、児発管の人材が不足しているという現状があります。
厚生労働省のデータから児発管に関するデータは参照することができないものの、
類似職である児童指導員としての有効求人倍率が、令和4年において全国で3.74倍となっており、一人に対して3.74件の求人があるという状態にあります。(参考:厚生労働省 職業情報サイト)
冒頭に述べた通り、具体的な有効求人倍率のデータは提供されていないため、正確な数値は不明です。
しかし、障害福祉分野全体の高い求人倍率と、各事業所に配置が必要とされる点から、児発管の有効求人倍率も高水準であると推測されます。
また、厚生労働省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームの報告によると、平成29年時点で、全職種の平均求人倍率: 1.5倍に対し、障害福祉関係の求人倍率: 3.2倍でした。
全職種に対して障害福祉関係職の求人倍率が2倍ほどあるということからも、児発管の需要は高いと考えられます。
専門知識の重要性
さらには、2017年(平成29年)に、国は児童発達支援管理責任者にこれまで以上の専門性を求める方針を打ち出しました。(参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o090080/chiikiseikatsu/syougaijisien/houdei-kijun.html)
この告知の影響で、みなし児発管として勤務していた人が児発管として認められなくなり、児発管不足が発生したのです。
近年でも、施設の数は増加しているものの、未だに全国で十分な支援が行き届いていないという現状があります。
支援を必要とする児童が急増する一方、施設に1人配置必須となる児発管がいなければ、施設は開所できないという現状があります。
そのため児発管の需要は年々高まってきているのです。
給料が良い
児発管の年収は、同じ福祉分野の他職種と比較しても高い傾向にあります。今回は、保育士や児童指導員の年収を参考に比較します。平均年収の比較は以下の通りです。
以下は、児童指導員&保育士と児童発達支援管理責任者の給与を比べた表となります。
令和4年(2022年)12月 | 平均月給額 | (平均月給×12) | 平均年収額
児童発達支援管理責任者 | 371,320円 | 4,455,840円 |
児童指導員 | 305,130円 | 3,662,560円 |
保育士 | 327,820円 | 3,933,840円 |
参考:令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果(厚生労働省)(2023年8月公開)
児発管の年収に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。
保育士や児童指導員と比べると、児童発達支援管理責任者の平均年収はおよそ50万~80万ほど高いことが分かります。
給与の高さからも児童発達支援管理責任者の需要が高く、将来性があるといえるでしょう。
児発管の採用現場からの声
児発管キャリアでは中途採用支援サービスを運営しており、全国の事業者様・採用担当者様とやりとりがあります。
多くの担当者様から「児童発達支援管理責任者さんがなかなか見つからない」「待遇を良くしてでも取りたい」という声を多く頂きます。
これまで解説してきた通り、様々なデータからも児発管の需要が高いことはお分かり頂けたかと思いますが、
採用現場の声を踏まえても、児発管の需要が高く将来性があると言えるでしょう。
児童発達支援管理責任者になるには?
需要が高まっており、将来性も期待される児発管ですが、実際に児発管になるためにはどのようなプロセスが必要なのでしょうか。見ていきましょう。
児発管になるためのプロセスは以下の通りです。
実務経験
実務経験の有無に関しては、3つのパターンに分類されます。
原則
直接支援業務(※1)の経験が8年以上もしくは、相談支援業務(※2)の経験が5年以上必要
引用;障害福祉サービスかながわ「サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者になるまでの流れ」
引用;障害福祉サービスかながわ「サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者になるまでの流れ」
有資格者
下記【対象者】については、相談支援業務もしくは直接支援業務の経験が通算して5年以上
【対象者】
・福祉主事任用資格を有する者、
・ホームヘルパー2級(現:介護職員初任者研修)以上に相当する研修を修了した者
・保育士
・国家戦略特別区域限定保育士
・児童指導員任用資格者
・精神障害者社会復帰指導員任用資格者
国家資格等による従事期間あり
下記【対象者】については、
相談支援業務もしくは直接支援業務の経験が通算して3年以上
【対象者】
児発管の場合:国家資格等(※3)の業務を5年以上経験している者
サビ管の場合:国家資格等(※3)の業務を3年以上経験している者
引用;障害福祉サービスかながわ「児童発達支援管理責任者の実務経験要件(2021年5月修正版)」
研修Ⅰ
基礎研修+相談支援従事者初任者研修の受講
OJT
実際に現場に出ての職務経験
*以下の特例要件①~③を満たす場合、6か月以上でも可能
①基礎研修受講時にすでに配置に係る実務経験を満たしている
②個別支援計画の業務に従事すること
③個別支援計画の作成の業務に従事する旨を指定権者に届出をすること
研修Ⅱ
実践研修の受講
配置
児発管として正式配置
就職後、研修Ⅲ
更新研修・5年ごとに受講
更新研修の内容や5年ごとの厳密な意味や注意事項に関しては、以下の記事に記載があります。
児発管としてのやりがいや苦労する点
将来性が期待される児発管ですが、どのようなやりがいを感じることができるのでしょうか。
また、逆に児発管として働くうえで苦労する点はどんなことなのでしょうか?
以下で解説していきます。
やりがい
子どもの成長を感じられる
個別支援計画を立てる立場にある児発管は、子どもたち一人一人の成長を知っておかなければなりません。
対象児の発達に合った支援を考え、子どもの「できた!」を共有できることは、児発管の大きなやりがいです。
発語のなかった児童が一言喋った、数の概念が獲得できたなど、見逃してしまいそうな小さな子どもの成長に喜びを感じられます。
支援計画を立てる業務はもちろん楽ではないですが、こういった子どもたちの変化・成長を近くで感じられる喜び・楽しさは計り知れません。
家庭支援・基礎集団支援に関われる
スタッフの育成・事業所運営も児発管の仕事の一部になります。
どのような雰囲気の事業所にするのか、何を重視するのか、児発管のカラーがよく出るところだと感じます。
スタッフの良さを上手く引き出す児発管がいる事業所は、離職率が下がり利用者のサービスにもよい影響をもたらすでしょう。
先述の通り、スタッフを指導しつつチームとしてまとめる業務はかなり大変ではありますが、
利用してくださる保護者・子どもさんの満足度向上に直結する仕事ですので、やりがいもあります。
事業所の雰囲気を作れる
児発管は、保護者様との窓口となり相談を受けることが多くなります。
事業所内相談で保護者さまのお話をお伺いしたり、関係機関と連携してクリニックや学校・園と支援方法を共有することもあります。
施設に預けている時間をレスパイト(ケアから解放されて休憩する時間)として大切にされている保護者様も多くいらっしゃるでしょう。
対象者本人だけでは無く、家族や基礎集団に関わり、地域に求められる支援活動ができるのも児発管のやりがいです。
児発管について詳しくまとめた記事を以下に参照するので、こちらも参照にしてみてください!
参考記事:https://x-ship.jp/jihatsukan/kitsui/#index_id9
苦労する点・きつい点
業務量が多い
児童発達支援管理責任者(児発管)の主な役割は、個別支援計画の作成にあります。
この計画は、最大でも半年ごとに見直すことが求められ、継続的に策定し続ける必要があります。
策定の約1か月前には、対象者やその保護者とのモニタリング面談を実施し、支援計画の草案を作成します。
その後、草案をもとにカンファレンス会議を開き、利用者や保護者、スタッフなどの意見を反映して正式な個別支援計画を作成する流れになります。
これら一連の業務には、児発管がすべて関わることになります。
学校や施設の運営に合わせて、4月から9月、10月から3月といった期間で支援計画を立てることが一般的で、その分、面談も増加します。
特に4月の新年度開始時には、新規利用者の面談や個別支援計画の作成が多くなるため、この時期が一層負担になると感じる児発管の方も少なくないでしょう。
スタッフへの指導が大変
業界には、未経験のスタッフや特定の年齢層の指導を得意とするスタッフが多く集まっています。
そのため、子どもへの声かけの仕方、病気や薬に関する知識、発達段階の理解、記録の記入方法など、様々なことを教える必要があります。
仕事を楽しみながら、知識やスキル、マナーなどを身につけられるようにサポートし、適切な声かけや指導方法を工夫することも、児発管の重要な役割です。
また、スタッフ一人ひとりの性格や考えに合わせて効果的な指導法を模索することに悩む児発管もいるでしょう。
さらに、仕事に対する価値観や考え方が異なるスタッフをまとめるのは、精神的に負担がかかることも少なくありません。
こうした悩みは、他の児発管からもよく聞かれるものです。
スタッフ指導の悩みと対策については、以下の記事をご覧ください!
会社や上司と方針が合わない
会社の運営には売上が欠かせませんが、利益ばかりに集中すると福祉本来の目的から離れてしまいます。
売上の向上を最優先とする会社に、しっかりした福祉観を持つ児発管が勤める場合、方向性の違いから苦しく感じてしまうのは自然なことです。
また、企業の規模拡大や代表者の交代などで、方針が急に変わってしまうこともあります。
そのため、どのような理念を持つ会社かを知ることは、働く上で大切な要素です。
自分のキャリアプランを実現でき、いきいきと働ける職場を見極めることが理想です。
もし現在の法人や施設で方針が合わず、精神的に辛くなっていると感じるなら、転職などで新たな環境を検討するのも一つの選択かもしれません。
現場に入る時間が少なくなる
児童発達支援管理責任者(児発管)は、指導員とは異なり、スタッフのマネジメントや事務作業が多くなります。
そのため、管理業務や事務作業に追われることが増え、子どもたちと直接関わる時間が減ってしまう可能性が高いです。
子どもたちと接することが好きな方には、こうした状況が残念に感じられることもあるでしょう。
実際、子どもたちとの関わりが減ることで仕事のやりがいを失ってしまったという声もよく耳にします。
また、児発管キャリアの転職サービスへの問い合わせでも、「子どもたちとある程度関わりたい」というご希望を持つ方が多くいらっしゃいます。
さらに、管理者の役割や請求業務を兼務する場合、子どもたちと関わる時間は一層少なくなってしまいます。
まとめ
以上のように、児童発達支援管理責任者(児発管)は、発達障害児の増加や施設数の拡大、人材不足などの背景から、今後も需要が高まる職種であると言えます。
専門知識の重要性や高い給与水準も魅力的であり、社会的にも必要とされる存在です。
やりがいや成長機会も多く、福祉業界で重要な役割を果たす児発管は、将来性に満ちた職業と言えるでしょう。
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