児童発達支援管理責任者(以下、児発管)として転職活動をする際、求人票でしばしば目にする「管理者兼務」の文字。
今回は転職活動中の児発管の方向けに「管理者」の仕事内容とそれを兼務することのメリットやデメリットについて解説していきます。
実際に管理者を経験した筆者が具体的な事例なども交えて解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
放課後等デイサービス・児童発達支援施設の管理者とは?
放課後等デイサービスなどの管理者になるには、特段資格が必要というわけではありません。
ただし、事業所内の環境整備や従業員の育成など、施設全体を整え、業務が滞りなく進行していくために事業所全体を管理する業務を担うことになります。
具体的にどのような仕事をしていくのか、以下で解説をしていきます。
管理者の仕事内容を具体的に解説
組織運営管理
管理者は、設置者(経営者)を代理して事業所全体を運営管理する責任があります。
運営理念の実現のために、事業内容の深い理解に基づいて適切な支援の提供に努めます。
運営状況の全体を把握し、事業を円滑にすすめる役割があり、 関係機関との連携、人材育成、適切な人員配置、自己評価及び外部評価などにも配慮して、
事業を運営する適切な人員配置や備品の適切な整備など、事業に必要な運営を保つのが職務です。
事業所の代表者
管理者は、指定権者(都道府県等)への申請・届出、問い合わせ対応等のやりとり、学校や保育園、他事業所等との連絡調整等々、苦情対応を含めて対外的には事業所を代表する顔です。
学校や保育園との間で必須となる連絡調整には、たとえば送迎業務に関することがあります。
利用時のお迎えに何時にどこへと相談して決めるのですが、同時刻にお迎えは複数あり、送迎車両とドライバーの数には限りがあるので、パズルを解くような調整力が求められます。
また、支援調整や虐待事案等、児童の関係する他職種の連携を図るための連絡調整も大切な仕事となります
従業員管理やマネジメント
管理者は、児童発達支援管理責任者との情報交換と意思疎通を密にして、従業者の意見を聞く機会を設けるなどして運営理念や方針の浸透をはかります。
また、新規採用等による適切な人員配置で職場環境を整えたうえで、
従業者が知識・技術を高めるための研修の開催や研修への派遣を行う等、人材育成に取組みます。
より質の高いサービスを提供し、利用者に満足してもらえるようにするためにも、従業員の育成業務は重要です。
保護者への対応・説明責任
管理者は、子どもと保護者が放課後等デイサービスを適切かつ円滑に利用できるよう、説明責任を果たすとともに必要な支援を行う責務があります。
子どもの成長を支える事業として、保護者との連携と信頼関係の醸成は管理者の仕事です。
保護者に限らず苦情(虐待を含む)対応は管理者を解決責任者とするのが通常です。
保護者からの苦情で一番困るのは他利用者に関することです。事業所内での他害に対する苦情はよくあります。
強度行動障害はもとより、そこまでではなくとも活動中の情緒等が影響して他害にいたる子どもは多くいます。
安全と安心を確保するのが児童支援事業所の大前提ですから、そのような事態になることの無いよう、楽しく過ごさせながら子どもたちの様子やかかわり方を観察してうまく導くのが児童指導員の役割です。
しかし、一人ひとり特別な配慮が求められるからこの事業を利用しているわけですから、そうそう思うようにコントロールできません。
苦情を受け付けたとき、次いでその対応を決めて回答するとき、それでは納得いただけないとき、さらに検討した結果を通知するとき、場合によっては主務官庁に届け出も・・・・矢面に立って対処するのは管理者です。
児発管が管理者兼務をする場合のメリット・デメリット
管理者兼務の場合のメリットやデメリットをそれぞれ解説していきます。
管理者兼務のメリット
支援と管理との相反が起きにくい
利用者に対して適切な支援をマネジメントすることと、その環境を整備する組織運営とは、切っても切れない関係です。
利用者支援の充実と事業所としてのコスト管理は利害が反することもありますが、一人の責任者が担うことで適切な運営ができます。
事業を取り巻く関係者には、大きく分けて行政(国と自治体)、設置者(経営側) 、利用者(その家族も含む)、従業者(管理職も含む)があります。
児童福祉法とそれにかかる政策による事業ですから総体としてその枠組みに縛られるのは当然です。
その大枠の中で設置者の意を受けた経営の安定継続を前提として、利用者と従業者双方の利益となるよう働きかけます。
- 経営側:より少ない経費でより多くの収入(安い設備、すこしの人件費で、多額の利用報酬)が求められます。
- 利用者:一人ひとりが望むようにたくさん楽しみながらのびのび発達できて負担が少なく保護者にもメリットのあるような運営が求められます。
- 従業者:働きやすい職場環境を整備して、収入面の満足が得られ、かつキャリアパスをバックアップしなければなりません。また、児発管からは児童指導員の増員等の要望もあります。
児発管が管理者も兼務することで、上記すべての関係者とのつながりができるため、衝突や相反が起きにくくなります。
事業所内の派閥ができにくい
経営サイドである管理者と現場サイドである児童発達支援管理責任者が兼務であれば、上記で説明したように、首尾一貫した運営が速やかに実施できます。
リーダー間の意見相違や対立ということがないので部下である従業者が右顧左眄することもなく、変な派閥的な人間関係が生じにくくなります。
人間関係が原因で退職をしてしまう従業員も多いため、こういった派閥的な揉め事が減ることもメリットの1つになるでしょう。
給与が高くなる
人員基準上設置が必須である二つの管理職種を一人で担うことで、事業所としての人件費を圧縮でき、その反映として責任の重さに応じた給与が期待できます。
上記のように、さまざまな関係者との調整や保護者への説明責任など、仕事の負担が大きくなる分、給料は高めに設定されていることがほとんどです。
求人によっては、月給で50万円近く出している所もあるくらいです。
管理者兼務のデメリット
仕事量やストレスが増える
管理者の場合、上記のように仕事内容が多岐に渡ります。
児童発達支援管理責任者の仕事と兼任する場合、膨大な仕事量になってしまい、負担が大きくなってしまいます。
また、従業員のマネジメントなどの業務は、一般的にどの会社でも大変とされていることです。
人間関係や人員配置なども含めて、考慮すべき点も多くなり、人によっては大きなストレスになるでしょう。
集中して子どもへ関わることができない
また、上記のように業務量が増えると、疲労やストレスが溜まり、子どもへの療育に関する業務がおろそかになってしまいかねません。
子どもたちとの関わり中心で仕事をしていきたい方にとっては、自分のやりたいことへ専念できずに、仕事へのやりがいを見出しづらくなってしまうでしょう。
もちろん、給与の高さや施設全体を自分主導でよい方向へ導けるというメリットもありますが、これらにやりがいを感じるかどうかは人によって異なります。
管理者兼務に負担を感じたら
もし管理者を兼務することに大きな負担を感じてしまったら、早急に対処することが必要です。
負担が大きい状態で仕事を続け、心身を壊してしまっては、利用者さんのためにもならないですし、何より自分によって一番よくないです。
具体的な対応方法を以下に紹介します。
上長や相談窓口に申し出て管理者兼務を辞めさせてもらう
もし上長(例:エリアマネージャー)がいたり、相談窓口が存在していたりしたら、ぜひ相談しましょう。
「管理者兼務に負担を感じている」「児発管の業務に専念させてほしい」等正直に伝えてみると、対応してもらえることもあります。
ただし、上記でも書いた通り、管理者業務分に支払われている給与がなくなるため、ほとんどの場合は給料が下がってしまいますので、注意しましょう。
相談しても対応してもらえなさそうな場合、管理者兼務はしたくないけど給料は下げたくない場合は、転職を検討しましょう。
環境を変える
管理者兼務なしで児発管業務に専念できる職場へ転職するという選択もありです。
まとめ
児発管の方が管理者兼務する場合、様々なやりがいもある一方、業務量の増加や責任の増大など、デメリットもあるのが現状です。
自身のキャリアプラン・やりがいを見出している点を踏まえて、管理者兼務を許容できるかどうか今一度考えてみることが大事でしょう。
また同時に、求人を見る際や応募する際にも、必ず「管理者兼務かどうか」をチェックするようにすると良いでしょう。
児発管キャリアでは、管理者兼務アリ/ナシ両方の求人を取り扱っております。
上記を踏まえて「管理者兼務ナシの求人が気になる」「自分は管理者としてキャリアアップしたい」など、ご希望のある方はぜひ下記からお問い合わせ下さい。
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