近年、教育のデジタル化が進んでいます。コロナによる影響やAI技術の発展により、ますます加速しているデジタル化。
そのため、民間企業によるデジタル教材の開発も増えてきており、その中には様々な仕事内容が含まれます。
この記事では、その業務フローとそれぞれの業務で必要となる能力について詳しく見ていきましょう。※あくまで一例です。
プロジェクト企画と設計
デジタル教材開発の最初のステップは、プロジェクトの企画と設計です。
市場やユーザーニーズの調査
デジタル教材開発の初期段階で行われる市場調査やユーザーニーズの理解は、成功を左右する重要な要素です。これらを理解するための具体的な方法を以下に紹介します。
市場調査
市場調査では、対象となる市場の規模、競合他社の製品やサービス、トレンドなどを調査します。以下のような手法が役立ちます。
- データ分析: 統計データや市場調査レポートを活用し、教育市場全体のトレンドやニーズを把握します。これらは、教育省や市場調査会社などから入手できます。
- 競合分析: 既存のデジタル教材を分析し、他社の成功要因や改善点を理解します。ユーザーレビューや評価も参考になります。
- エキスパートインタビュー: 教育専門家や業界関係者とのインタビューを行い、市場の動向や未来のトレンドを理解します。
ユーザーニーズの理解
ユーザーニーズを理解するためには、直接ユーザーと接することが重要です。以下の手法があります。
- アンケート調査: アンケートを実施して、学習者や教育者のニーズや問題点を探ります。これは、オンラインアンケートツールを使って簡単に行うことができます。
- ユーザーインタビュー: ユーザーを直接インタビューし、学習経験、学習の障壁、理想的な学習体験などについて深く理解します。
- ユーザーテスト: 早期のプロトタイプを使ってユーザーテストを行い、ユーザーの反応を観察します。これにより、ユーザーが製品をどのように使用するか、どの部分が理解できないか、どの機能が欲しいかなどを具体的に把握できます。
これらの手法は、製品開発の初期段階から始め、開発全体を通して繰り返し行うことで、ユーザーニーズを的確に捉え、製品を適切に調整することが可能となります。
ターゲット・提供方法の決定
この段階では、ターゲットとなる教育レベルや教科、学習目標を定義します。
さらに、どのような形で教材を提供するか(ビデオ、テキスト、インタラクティブコンテンツなど)、どのようなプラットフォームを使用するか(ウェブベース、アプリなど)を決定します。
ここまでですでにお分かりいただけたかもしれませんが、デジタル教材の開発には、プロジェクト管理スキルも求められ、プロジェクトの目標を明確に定義し、リソースを適切に割り当てる能力が必要になってきます。
コンテンツ開発
次に、定義した教育目標に基づいて具体的な教材を開発します。
これはテキストの作成、ビデオの撮影・編集、クイズやゲームなどのインタラクティブ要素のプログラミングなど、多岐に渡ります。
どんな教材を作るかにもよりますが、それぞれの注意点などを以下で見ていきましょう。
テキストの作成
テキストコンテンツは教材の基盤となります。これには、学習目標を達成するための情報、説明、例示、問題などが含まれます。
作成プロセス: 学習目標を明確に理解した上で、その目標を達成するためのテキストを作成します。これには、主題の解説、具体的な例、問題などが含まれます。
注意点: テキストは明瞭で分かりやすく、学習者の理解度に合わせて調整する必要があります。また、教材としての一貫性を保つため、同じスタイルとフォーマットを使用することが重要です。
ビデオの撮影・編集
ビデオは視覚的な学習をサポートし、複雑な概念を視覚的に示すことができます。これは講義、実験、アニメーションなどの形式を取ることがあります。
作成プロセス: ビデオの内容とスクリプトを計画し、撮影します。撮影後は編集を行い、視覚的なエフェクトや字幕などを追加します。
注意点: ビデオは分かりやすく、視覚的に魅力的でなければなりません。また、長すぎるビデオは学習者の注意を逸らす可能性があるため、適切な長さに保つことが重要です。
インタラクティブ要素のプログラミング
インタラクティブ要素は、学習者の参加とエンゲージメントを促します。これには、クイズ、シミュレーション、ゲームなどが含まれます。
作成プロセス: 学習目標に基づいてインタラクティブ要素を設計し、それをプログラミング言語を用いて実装します。
注意点: インタラクティブ要素は学習目標を直接サポートするよう設計する必要があります。また、ユーザーフレンドリーで、操作が直感的であることが重要です。
これらの要素は相互補完的であり、一つの教材内で組み合わせて使用されます。
これらの組み合わせにより、効果的なデジタル教材が作成され、学習者の理解と参加を促すことが可能となります。
テストとフィードバック
教材のテストとフィードバックの収集フェーズは、開発された教材が目標のユーザーにとって適切であるかを確認し、さらなる改善を行うための重要な段階です。
ユーザーテストの実施
教材が初めて実際のユーザーの手に渡るのが、このユーザーテストです。ユーザーテストは様々な形式がありますが、以下に主要なものを示します。
- 使用テスト:ユーザーに実際に教材を使用してもらい、その反応を観察します。これにより、ユーザーが教材をどのように使用するか、どの部分が理解できないか、どの機能が欲しいかなどを具体的に把握することができます。
- グループインタビュー:複数のユーザーを集めてグループインタビューを行います。これにより、ユーザー間での意見の違いや共通の問題点を見つけ出すことが可能です。
フィードバックの収集と分析
ユーザーテストを通じて集められたフィードバックは、教材の改善に直結する貴重な情報源です。
フィードバックは多様な形式(口頭、書面、アンケート等)で得られますが、それらを効率的に分析し、具体的な改善策に落とし込む能力が求められます。
具体的には、以下のようなステップを踏むことが一般的です。
- フィードバックを分類し、同じ種類の意見をまとる。
- 各分類の中で特に多かった意見や重要そうな意見を抽出。
- 抽出した意見に対する解決策を考え、それを実施するためのアクションプランを立てる。
コミュニケーションスキル
また、ユーザーとのコミュニケーションは、ユーザーニーズを深く理解する上で不可欠です。
ユーザーからフィードバックを引き出すための質問力、ユーザーの言葉を解釈する聞き取り力、ユーザーの不満に対応するための対応力など、様々なコミュニケーションスキルが求められます。
このフェーズでは、技術的なスキルだけでなく、人間理解やコミュニケーション能力も重要となります。これらが合わさることで、教材はユーザーの真のニーズに応え、さらなる進化を遂げることが可能となります。
配信とサポート
ハード面
最後に、完成した教材を配信し、ユーザーサポートを提供します。これはウェブサイトやアプリストアへのアップロード、ユーザーの問い合わせ対応、バグの修正やアップデートの実施などを含みます。
この段階では、技術的な知識が求められます。例えば、教材を配信するためのウェブ技術や、アプリの開発・配信に関する知識などです。
ソフト面
また、顧客対応のスキルも必要で、問題解決能力やコミュニケーション能力が重要となります。
以上が民間企業におけるデジタル教材開発の基本的な業務フローと、各フェーズで必要となる主な能力です。
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