「児童発達支援管理責任者(児発管)は送迎業務に行ってはならない」という話を見かけることがある一方、児発管の業務として送迎が含まれている場合も頻繁にあります。
結局のところ何が正しいのかよく分からないという方も多いと思うので、
今回は送迎業務の詳細も確認しつつ、児発管が送迎を行うことはアリなのかナシなのか、公的機関の資料をもとに詳しく確認していきたいと思います。
そもそも送迎業務とは?
送迎業務の大まかな流れ
児発や放デイにおける送迎業務とは、施設を利用する児童を送り迎えする業務のことです。
たとえば、学校等まで迎えに行ったり、サービス利用終了後に施設から自宅まで送ったりします。
細かい業務内容やポイントはのちほど解説しますが、大まかには以下のようになっています。
- 車両準備
- 送迎ルート確認
- 送迎
- 教職員・保護者への対応
- 点検
送迎業務が行われている主な理由
送迎業務を行うと、国からの報酬において「送迎加算」が取得できます。
放課後等デイサービスや児童発達支援の送迎加算は片道あたりで単位数が決められています。(つまり、往復で送迎をする場合は単位数が2倍となります。)
次の項では、送迎加算の詳細について詳しく見ていきましょう。
送迎加算について解説
送迎加算の共通要件
・学校と事業所間の送迎手段の確保が難しいこと
・保護者が送迎できない都合があること(仕事など)
・スクールバスなどでの送迎が難しいこと
・保護者が送迎を行うことに同意していること
参考:「平成24年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A(平成 24 年8月 31 日)」
送迎加算の単位数
障害福祉サービス費等の報酬算定構造(厚生労働省)によると、放課後等デイサービスにおける送迎加算については以下のように規定されています。
障害児(重症心身障害児を除く)の場合 | 片道につき54単位 | 注1)一定の条件を満たす場合 +37単位 注2)同一敷地内の場合 ×70/100 |
重症心身障害児の場合 | 片道につき37単位 | 注)同一敷地内の場合 ×70/100 |
支援を実施する事業所と同一敷地内の場合は、単位数がそれぞれ70%となります。
送迎加算の主な注意点
厚生労働省の資料などをもとに、いくつか送迎加算に関する注意事項を紹介します。
徒歩による送迎は基本的には加算対象外
徒歩による送迎に職員が付き添いした場合は、加算の対象にはなりません。
送迎に関する経費は生じていないため、算定できないとされています。
ただし、自治体によっては加算可能な場合もありますので、それぞれ自治体の担当部署へ算定可否を問い合わせる必要があります。
参考:「平成24年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A(平成 24 年8月 31 日)」のp52
個別支援計画書への明記
児童発達支援管理責任者が作成する個別支援計画書に、送迎の必要性を明記しておく必要があります。
単に送迎すればよいというものではなく、なぜ送迎が必要なのかを計画書に記載することになっています。
送迎が障害児の自立能力獲得を妨げないよう配慮する必要があるので、「加算がもらえるから送迎する」といった安易な対応にならないようにするべきです。
事業所と自宅以外の送迎は認められるのか
送迎はあくまで事業所と自宅間が原則ですが、たとえば事業所の最寄り駅や自宅近隣に設定した集合場所などへの送迎が想定されます。
事業所⇔自宅以外の送迎の場合は、事前に利用者と合意のうえ、特定の場所を定めておく必要があります。
自宅まで送迎を行う必要がある利用者について、自宅まで送迎を行わない場合は、算定対象外となってしまうので注意が必要です。
参考:「平成 27 年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A(平成 27 年3月 31 日)」のp2
送迎業務の具体的な内容と注意点
送迎業務の準備
送迎業務前に、使用する車両の点検や送迎順序を確認しましょう。
車両の点検では、少なくとも外装の傷やタイヤの空気圧、ガソリン残量を確認しましょう。
また、学校へのお迎え時は、下校時間や当日の利用者人数を必ず確認してから送迎業務を行います。
注意点
車両点検は余裕をもって行いましょう。
送迎業務を行う直前に車両の点検を行うと、パンクやバッテリー上がりなどの不測の事態に対応できなくなり、送迎業務を行えなくなります。
また、冬季は路面状況によりスタッドレスタイヤやチェーンの必要もあるため、準備は早めに行いましょう。
送迎時に当日の利用者人数を把握していないと、誤ってスクールバスで下校してしまったり、来る予定の利用者を置いてくることにもつながります。
必ず「いつ、どこに、だれをお迎えに行くか」を確認しましょう。
学校や自宅⇔事業所の送迎
下校時間や送迎時間内に利用者を送迎できるように時間を意識し、安全運転を心がけましょう。
また、車内は施設内に比べ狭い空間になるため、他害などが起こらないように見守りをしっかりと行いましょう。
注意点①
車内では必ずシートベルトをさせ、座席は利用者間の関係性を考慮しましょう。また、助手席に利用者を座らせる場合は絶対に運転に支障がでない利用者のみを座らせます。
必要に応じてチャイルドロックやチャイルドシートも活用しましょう。
利用者によっては荷物が複数ある場合もあります。降りる際は荷物がすべてあることを確認し、取り違えがないようにしましょう。
運転時は利用者が不安にならないように急ハンドルや急ブレーキなどが起こらないように余裕を持った運転を心がけましょう。
注意点②
静岡県で起きてしまった送迎バスの置き去り事故を踏まえて法改正が行われ、以下の2点が義務付けられました。
- 児童を送迎者に乗降させる場合、点呼で必ず所在を確認すること
- 車内の児童の見落としを防止するために、ブザーなどの装置を装備し、降車時に所在確認をすること
参考:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令について(通知)
注意点③
送迎は運転手以外にも直接支援員を配置して複数名で行う必要があります。
ただし、送迎に出た人員は施設内の人員配置から除外されてしまいます。
施設全体の人員配置基準を下回らないように注意が必要になります。
徒歩での送迎
車両を使わない送迎もあります。
徒歩で行う場合は利用者が信号などの交通ルールの理解度や利用者の歩くペースを考えて行います。
注意点
外を歩く際は、指導員が道路側、利用者が歩道側となるように歩きましょう。
また、逃走・飛出しの恐れがある利用者については必ず手をつないで歩きましょう。
また、ルートについても事前に確認し、より安全に歩くことのできるルートを選択しましょう。
外は施設内より興味をひくものがたくさんあります。利用者が歩くことを意識できるように誘導しましょう。
教職員・保護者への対応
お迎えに行く際は、利用者の様子をしっかりと聴き、保護者へ引き渡す際は施設内での様子をしっかりと伝えましょう。
小さなことでも気になったことやできるようになったことがある際は必ず伝えましょう。
注意点
利用者の様子を聞く際に普段と違う様子が見られる場合は、他の指導員にも必ず聞いた内容を共有してその日の見守りに役立てましょう。
利用者の施設内での様子を伝える際は、利用者の個人情報に注意して伝えるようにしましょう。
また、お友達との交流関係についても相手がいることに気を付けましょう。
保育園等で学校の先生や保護者と会話している際に利用者が行方不明になるケースがこども家庭庁から報告されています。
送迎時も学校の先生や保護者への対応中に利用者の見守りが疎かにならないように注意しましょう。
送迎業務後の点検
利用者が全員降車した後は必ず車内を点検します。絶対に利用者の降ろし忘れや忘れ物がないことを確認しましょう。
注意点
座席の下のみならず、トランクルームに利用者の所持品が紛れ込むこともあります。
また、車内、車外関わらず問題がある際は必ず管理者に報告し、次の送迎業務に支障が出ないように対応しましょう。
児童発達支援管理責任者(児発管)は送迎業務禁止なのか?
「児発管は送迎に出ることはできない」という話を見かけることがある一方、児発管の業務として送迎業務が含まれている場合も多く見かけます。
これに関して、自治体の資料等を基に詳しく解説していきます
児発管の送迎業務に関する公的機関の見解
広島県の資料「障害児通所支援事業に係るQ&A(令和5年3月更新)」(→リンク切れのため、こちらを参照ください。当時のファイルのバックアップです。)によると、
「児童発達支援管理責任者が送迎に出ることを禁止する明確な規定はありません」
と記載があります。
ネットで検索して出てくるいくつかのページなどでは「児童発達支援管理責任者は送迎業務できません」と断言している記述を見かけますが、
そのようなことを規定する文書は令和5年時点では存在していないということになります。
他にも、福岡県の資料「放課後等デイサービスに関する質問について(平成30年8月1日)」においても、
「送迎時の人員として本来,直接支援にあたらない管理者や児童発達支援管理責任者についても業務に支障が生じない範囲で送迎を行うことができるよう見直します」と記載があり、
「児発管は送迎業務をしてはいけない」と明確に禁止していはないです。
児発管による恒常的な送迎は相応しくない
先ほど紹介した広島県の資料「障害児通所支援事業に係るQ&A(令和5年3月更新)」(→リンク切れのため、こちらを参照ください。当時のファイルのバックアップです。)にはつづきがあり、全文は以下のようになっております。
送迎を明確に禁止しているわけではないものの、児発管の職務内容的に恒常的に送迎を行うことは相応しくないと記載があります。
しかしながら、多くの事業所で人手不足となっており、児童発達支援管理責任者が送迎を行っているケースも多くなっています。
まとめ
今回は児童発達支援管理責任者の送迎業務に関して解説していきました。
結論としては、明確に禁止する法律等はないものの、児発管の業務特性上、恒常的に送迎に従事することは相応しくない、となります。
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