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STEAM教育の先駆者、株式会社ヴィリングCEO&Founder中村一彰氏に伺う教育への思い

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最先端の教育を実践する学校や企業を取材するインタビュー企画。

今回は日本初のSTEAM教育スクール「ステモン」を運営する株式会社ヴィリングさん!

STEAMとは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、アート(Art)、数学(Mathematics)の5つの英単語の頭文字です。参考:文部科学省(STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進)

今回は、不動産ベンチャーから医療系ベンチャーを経て、株式会社ヴィリングを設立した代表の中村さんと、中村さんとは医療系ベンチャーで同僚でもあった株式会社クロス・シップの代表の野﨑との対談です。

前半(本記事)ではどんな思いで教育分野に参入し、株式会社ヴィリングを設立してSTEAM教育のステモンを立ち上げるに至ったのか、また、事業の根底に流れる哲学についてもお伺いしました。

プロフィール

中村一彰さん
  • 株式会社ヴィリング Founder and CEO
  • 小学校教員免許保持
  • LEGO® SERIOUS PLAY® facilitator
目次

株式会社ヴィリング、設立の思いと背景

どんな背景で、教育学部卒業からベンチャーへ入社から起業、という道に至ったのか?

左:ヴィリング 中村さん 右:クロス・シップ 野﨑(インタビュアー)


野﨑:お互い昔から色々と知っている仲ではありますが、
まずは大元からお話させていただければと思っています。
ヴィリングを設立した想いを伺ってもよろしいでしょうか?

中村:ヴィリングを設立する前は、2つの事業会社で会社員をやってました。
その時から起業したいという想いはあって、起業するならどの領域か?を考えていました。

Webマーケティングとか、医療介護業界向け事業とか、色々と。。
その上でやはり、起業するのであれば自分が長い時間情熱を持ってやれる領域だなと考え、
そこは間違いなく教育だ!とたどり着きました。

野﨑:中村さんはもともと教育に強い想いをお持ちでしたものね。
たしか、教員の免許もお持ちですよね?

中村:そうですね、元々は教員になろうと思っていて。
大学では教育学部を卒業して、
小学校と中学・高校の体育教員の免許を持っています。

野﨑:ちなみに、教員という職ではなく民間事業者さんへの道を選んだのは、どんな理由からですか?
当社(クロス・シップ)は教育領域特化のキャリア支援事業をやっており、
まさにそのような方をご支援することが多くなってきています。参考までに、ぜひお伺いしたいです。

中村:新卒の時にそのまま教員にならなかったのは、
教育実習で学校に行ったときに、やりがいを感じつつも、同時に閉塞感を感じたんですよね。
学校で働くことに楽しさを覚えつつも、同時に窮屈さや、
自分はここで定年までやり切れるのかな?みたいなことを考えたというか。

それであれば、一旦民間に行って頑張ってみるのもアリなのでは?と考え始め、
せっかくなら若い人たちを中心に急成長してる会社に!ということで選んでいき、
最終的にベンチャー企業にたどり着きました。

野﨑:なるほど!素晴らしいチャレンジですね。
民間事業者で様々なチャレンジをされた上で、
今はもともと想いがあり強い情熱を持って取り組める教育領域に戻ってこられて起業されている、と。
本当に素敵なキャリアだと思います!

探求学習、STEAM教育とは?そこに行き着いた思いや背景とは?

中村:ありがとうございます。
それで起業領域を教育に決めて、その中で何をやっていこうかを模索していたときに、探求学習に出会いました。
色々とリサーチしている中で、探求学習に取り組んでいるフリースクールを知り、見学に行きました。
その時に、探求学習って本当に素晴らしいな、こういう事をやりたい!と思いました。

野﨑:なるほど。私も、そのフリースクールへお邪魔したことがあります。
本当に素晴らしい学校さんですよね。

中村:はい、その時は自分も、探求学習がいいな、自分もこういうことをやりたいな、と思っていて。
ただ、そこはいわゆるフルスクールだったんですよね。
授業料も年間100万円くらい必要なので、私学と同じような感じなんです。
学校自体は本当に素晴らしいのですが、学費の壁もあり通える人も少し限られてしまうという課題もあるなと思いました。
でも、この探求学習を放課後の習い事としてやったらいいんじゃないか?と考え、テスト実践をし始めたんです。

野﨑:柏、芝公園、浦和あたりで、探求学習の習いごとをやろうとしてましたよね!
私もお手伝いに行ったことを覚えています。

中村:懐かしいですね。チラシもたくさん配ったりして。
だけど、問い合わせはほぼ来なかったですね。。

野﨑:あの時はきつかったですね。。

中村:それで、一旦探求学習の習いごとはクローズ。
別のことを探さなきゃダメだと思って、次の領域をリサーチしているときに「民間学童」とか「ロボット教室」というワードに出会いました。
そこからSTEAMという考え方、またその根底にある「フロー理論」と「コンストラクショニズム」という考え方も教わり、とても共感しました。

野﨑:なるほど、そこでSTEAM関連で何かやってみよう、と考えられたのですね。

中村:はい。それと、もう一つのワードとして出会っていた「民間学童」。
2014年当時「小1の壁」が問題視され始めていて、社会でニーズが高まり始めていた民間学童をオープンしました。
その民間学童に、「探求学習」と「STEAM教育」というやりたい2つのコンテンツを入れる、という形に昇華させました。

フロー理論とコンストラクショニズム

野﨑:フロー理論とコンストラクショニズムという考え方について、もう少し詳しく教えてください。

中村:これは当社の1番の根底にある思想哲学みたいなものです。
コンストラクショニズムは構築主義とも言ったりします。
作ることで学ぶとか、作りながら学ぶとか、そういった概念です。

フロー理論は言わずもがな、チクセントミハイ先生の理論ですね。
人間がその時していることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚。
フロー状態の時に、人の学びが最大化される。

野﨑:フロー理論は知っていましたが、コンストラクショニズムは初耳です。
それはプログラミングであれ、レゴであれ、どんなものでも、この考え方をベースに作られているんですか?

中村:はい。MITメディアラボを作ったシーモア・パパート教授が提唱しているのがコンストラクショニズムです。
構築主義。パパート教授は、教育学の大家であるピアジェの1番弟子なんです。
ピアジェはどちらかというと研究寄りの人で、パパートは、ピアジェの素晴らしい理論、考え方、研究成果をより教育の実践の場に落とし込んでいきたい、子供たちが学習するツールに落とし込んでいきたいという考えが強い人です。
研究者というよりも実践者、という感じですね。

ヴィリングでは、生徒たちがフロー状態に入り、作ることで学ぶ・作りながら学ぶ、ということをとても大事にしています。

ステモンの特長、ステモンが提供したいこと

ステモンの特長、提供したいこと、とは?

野﨑:現在はプログラミング教室やものづくり教室など、多様な教育事業者さんが出てきていますよね。
その中で、ステモンの差別化ポイントはどこになるのか、教えていただけますか?

中村:実は、今のプログラミング教室のほとんどが、プログラミング教育必修化が決まってから参入してきているんです。
現在、全国でプログラミング教室は1万教室ぐらいあるらしいんです。
そのほとんどが「2016年に文科省がプログラミング教育必修化します」と決めてから参入してきています。
「2020年から始まるらしいぞ、ダンスの時みたいに新しいマーケットができるんじゃないか」と。

でも僕らは文科省が必修化すると決めるずっと前の2013年からSTEAMっていうコンセプトでやっていて、その中の1つに自然とプログラミングがあった。プログラミング教育が必修化になるとは思っていなかったんですよね。

野﨑:確かに当時そんな話はなかったですね。ただやりたいからやっていた、みたいな感じだったような、、

中村:そうなんです。僕らは元々STEAMという概念を実践に落とし込みたくて、やってるんですよね。
その中でも特に顕著な違いで言うと、物理のカリキュラムが多いところですかね。
なにかを構築する(家、橋、歯車、振り子、など)。作りながら物理を学ぶ。

そういうカリキュラムが、割合として多く占めている。
最近巷では特に、ゲームやアニメを作ったりとか、ロボットを動かしたり、プログラミングのカリキュラムが中心。
画面の中で完結してしまいます。

一方我々は画面だけでなくものづくりも含めて、「作ることで学ぶ」「作りながら学ぶ」割合が非常に大きいんです。
これが1番の違いかもしれないです。

野﨑:まさに「手触り感がある」ということですね。

中村:当社にも、PCだけで完結するレッスンもあるにはありますが、基本的に物理的な機構を学ぶ、それを手触り感も含めて作りながら学ぶ、というレッスンが多いんです。
これって実は、特に低学年の子たちにすごく合うんですよね。
低学年はキーボードを扱うことも難しいし、直接触って手で動かせるものや使えるものの方が楽しいですしね。

発達段階にあったものを提供したい


野﨑:お話を聞いていて、確かに中村さんは昔から、子供たちと一緒にいても、率先して手を動かすことが好きだったなーと思い出しました。

中村:うん、手を動かすのは好きです。でも自分が好きだからというよりも「子供たちの発達段階に合ったものを提供したい」という思いがあります。小学校低学年とか、幼児期とか、それぞれにあったものを提供したい。

ITメーカーとか、デバイスメーカーは、自分たちの教材を使わせたいっていうのが先にあるから、学校の先生とかに、これを使ったプログラムはどうですか?というように提案するけど、
例えば学校の現場では「2年生にこれは無理だよ」みたいなことになっちゃうんですよね。

ステモンでは、「フロー理論」と「コンストラクショニズム」をベースに、子供たちそれぞれの発達段階に合わせて学びの環境を提供したいんです。
そういう思いを大切に、サービスをご提供しています。

あとがき

パソコンやタブレットを使うようなプログラミングのレッスンが多くある中、コンストラクショニズムをベースにして「手を動かすこと」を大切にされている点が非常に興味深く、勉強になりました。

まだまだインタビューはつづきます!
後編では、公教育でのプログラミング教育の難しさや前編でもお話しされていた子供たちの個性に合った学習の機会を提供したいという想いの詳細についてお聞きしています。
また、ステモンではどんな人が活躍しているのかなどについてもお話し頂いてます。

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