不登校とは?
不登校の定義を改めて確認
不登校は,心理的、情緒的、身体的、または社会的な要因・背景によって、児童生徒が登校しない、あるいはしたくてもできない状況にあることを指します。
ただし、病気や経済的な理由、新型コロナウイルス感染回避等によるものは除外されます。この定義は、平成4年の学校不適応対策調査研究協力者会議で示され、学校基本調査でも採用されています。
文部科学省の調査では、年間30日以上欠席した児童生徒を長期欠席者として調査しており、以前は欠席理由を「病気」「経済的理由」「学校ぎらい」「その他」に分類していました。
その後、「不登校」という言葉が一般的に使われるようになったため、平成10年度からは「学校ぎらい」を「不登校」に変更しました。
不登校の現状 データ
不登校の現状
現代の学校現場においても、家庭においても、不登校の数が増えているというイメージを持つ人も多いと思います。
以下では、令和5年に発表された文部科学省の調査結果を基に不登校の現状についてのデータをまとめました。(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/5aa667da-fe7f-4ea9-9ee2-7510121e6751/2d6548bb/20231016_councils_ijime-kaigi_dai2_01.pdf)
不登校児童生徒数の推移
2022年度(令和4年度)の文部科学省の調査によると、小・中学校における不登校児童生徒数は299,048人となり、過去最多を記録しました。これは前年度から54,108人(22.1%)増加しています。

学校種別の内訳
- 小学校:不登校児童数が大幅に増加し、在籍児童に占める割合は1.7%となりました。
- 中学校:不登校生徒の割合は6.0%に達しています。
- 高等学校:60,575人(前年度比18.8%増)で、在籍生徒の2.0%を占めています。
長期欠席の状況
不登校を含む長期欠席者数も増加傾向にあります:
- 小・中学校:460,648人
- 高等学校:122,771人
不登校の長期化
不登校児童生徒の55.4%が90日以上欠席しており、長期化の傾向が見られます。
学校種別不登校の現状

小学生
2022年度(令和4年度)の文部科学省の調査によると、小学校の不登校児童数は大幅に増加しています。
- 不登校児童数:81,498人
- 在籍児童に占める割合:1.7%
これは前年度と比較して約28.65%の増加率を示しています。
学年別の傾向
小学校では、学年が上がるにつれて不登校児童数が増加する傾向が見られます。具体的な人数は公開されていませんが、各学年平均で1人以上の不登校児童が存在する状況となっています。
支援の状況
不登校児童の61.8%に当たる184,831人(小・中学校全体)が、学校内外の機関等で相談・指導等を受けています
中学生
中学生の不登校について、増加傾向、長期化しているという現状があります。 具体的な例として、中学校1年生時に不登校となる生徒の割合が、前年度の小学校6年生時と比べて約3.1倍に増加していることが挙げられています。 これは、小学校から中学校への移行期の難しさに起因することを示唆しています。学習環境や生活リズムの変化、新たな人間関係の構築などに苦労する生徒が多いと考えられます。
不登校生徒数の増加
2022年度(令和4年度)の文部科学省の調査によると、中学校の不登校生徒数は大幅に増加しています。
- 不登校生徒数:約19万人
- 在籍生徒に占める割合:6.0%
これは前年度と比較して約3万人の増加となっています。
学年別の傾向
中学校でも小学生と同様に、学年が上がるにつれて不登校生徒数が増加する傾向が見られます。
- 1年生:45,778人
- 2年生:58,740人
- 3年生:58,924人
長期欠席の状況
中学校における不登校の長期化も問題となっています。
- 90日以上欠席している不登校生徒の割合:61.2%
クラス単位での発生率
中学校では不登校の発生率が高く、平均的な1クラスあたりの不登校生徒数は約2人となっています。
不登校傾向の増加
カタリバの調査によると、中学生の13.2%(推計41万9097人)が部分登校や教室外登校など「不登校傾向」にあることが判明しました。これは5年前と比較して推計8万人の増加となっています。(https://www.katariba.or.jp/magazine/article/report240125/)
高校生の場合
高校生の不登校問題は年々深刻化しており、特に近年の増加率が高くなっています。コロナ禍の影響や社会の変化に伴い、不登校の要因も複雑化していると考えられます。
不登校生徒数の増加
2022年度(令和4年度)の文部科学省の調査によると、高校の不登校生徒数は大幅に増加しています。
- 不登校生徒数:60,575人
- 在籍生徒に占める割合:2.0%
これは前年度の50,985人から9,590人(18.8%)増加しており、過去最多を記録しています。
長期欠席の状況
高校における長期欠席者数も増加傾向にあります:
- 長期欠席者数(30日以上の欠席):122,771人
これは前年度と比較して4,500人以上の増加となっています。
不登校の推移
高校生の不登校は近年急増しています:
- 令和2年度(2020年度):約43,000人
- 令和3年度(2021年度):50,985人
- 令和4年度(2022年度):60,575人
特に令和2年度から令和3年度にかけて5万人を超え、さらに令和4年度には6万人を超えるなど、増加の幅が大きくなっています。
不登校の原因
原因についても、学校種別に考えられる理由をまとめました。

小学生の場合
高学年になるにつれて不登校が増加する傾向がありました。これは、学年が上がるにつれて学習内容や人間関係が複雑化する、進学など将来への不安を抱きやすくなる、などの要因が考えられます。 また、「不安など情緒的混乱」と「無気力」が主な理由として挙げられます。
- 不安など情緒的混乱: 例えば、学校に行くことに強い不安や恐怖を感じ、腹痛や頭痛を訴えるケースです。 特定の教師やクラスメイトとの関係、いじめ、学業不振などが原因で、学校生活に強いストレスを感じていると考えられます。
- 無気力: 学校に行く意欲や気力が低下し、朝起きられない、倦怠感や食欲不振などを訴えるケースです。 学校生活への関心の低下、友人関係の希薄さ、家庭環境の問題などが背景にある可能性があります。
中学生の場合
中学生になると、小学生と比べて不登校の要因は多様化・複雑化します。
- 人間関係: 「いじめを除く他の児童生徒との関係」が問題となるケースが増加します。 これは、小学校から中学校への移行期における環境や人間関係の変化に適応できないことが原因として考えられます。
(もちろん、「いじめ」も大きな理由の一つのなると考えられます。しかし、文部科学省の調査では、かなり低い割合として示されています。これは生徒が先生にいじめを報告しずらかったり、文科省への調査の際に教員側がいじめが原因であると回答しなかったケースが多くあると考えられます。)
- 非行: 「あそび・非行」が不登校の理由となるケースも、小学生に比べて増加します。 これは、非行グループへの加入や、学校外の活動にのめり込むことなどが背景にある可能性があります。
- 進路: 進路選択など、中学生特有の悩みも影響している可能性があります。 将来に対する不安や、進路選択における悩みが、学校生活への意欲を喪失させる原因となることがあります。
高校生の場合
高校生になると、思春期を迎える人が多く心が安定しなくなりやすいです。
- 無気力: これは、進路に対する迷いや、学習意欲の低下、学校生活への適応の難しさなどが背景にあると考えられます。
- 不安など情緒的混乱: 将来に対する不安や、人間関係のストレス、学業のプレッシャーなどが、情緒不安定を引き起こしている可能性があります。
これらのことから、不登校の原因は、学年や発達段階によって異なり、学業面や友人関係の問題だけでなく、家庭環境や社会的な要因など、複雑に絡み合っていることがうかがえます。
不登校への対応
不登校の児童生徒への対応は、個々の状況を把握し、適切な見立てに基づく 必要があります。今回は、学校側・家庭側それぞれの視点からどのような対応をするべきなのかについて記述していきたいと思います。
学校側の視点から
個別支援計画の作成
- 子どもの状況を詳細に把握し、個々のニーズに合わせた支援計画を立てる。
- 定期的に計画を見直し、進捗状況に応じて柔軟に調整する。
安心できる居場所の提供
- 保健室や相談室などの環境を整備し、子どもが安心して過ごせる空間を確保する。
- スペシャルサポートルーム(SSR)や校内フリースクールなど、学校内に多様な居場所を設ける。
段階的な学校復帰支援
- オンライン授業や個別指導など、自宅でも学習できる機会を提供する。
- 短時間の登校や特定の授業への参加など、段階的に学校生活に慣れる機会を設ける。
教職員の連携強化
- 担任、養護教諭、スクールカウンセラーなど、複数の教職員で支援チームを組織する。
- 定期的なケース会議を開催し、情報共有と支援方針の統一を図る。
保護者との協力関係構築
- 定期的な面談や家庭訪問を通じて、保護者と密接なコミュニケーションを取る。
- 保護者の不安や悩みに耳を傾け、必要に応じて専門家による相談機会を提供する。
柔軟な学習評価
- 出席日数や試験結果だけでなく、個々の状況に応じた多様な評価方法を採用する。
- レポートや作品提出など、子どもの特性や興味に合わせた評価方法を検討する。
外部機関との連携
- 民間のフリースクールや児童相談所など、外部の支援機関と積極的に連携する。
- 必要に応じて医療機関や専門家の助言を受け、適切な支援につなげる。
家庭側の視点から
安心できる環境づくり
- 「つらい時には休んでもいいよ」と伝え、子どもに安心感を与える。
- 子どもの居場所を確保し、落ち着ける空間を用意する。
子どもとのコミュニケーション
- 子どもの話に耳を傾け、沈黙を恐れずゆっくりと時間をかけて聞く。
- 子どもの言葉に対してオウム返しで応じ、共感的な態度を示す。
- 「プラスの言葉」を意識的にかけ、温かいやり取りを重ねる。
好きなことを支援
- 絵を描く、読書、動植物の世話など、子どもの好きな活動を楽しめる環境を整える。
- 完成した作品などをほめ、自信をつけるきっかけを作る。
生活リズムの維持
- 昼夜逆転にならないよう、適度な生活リズムを保つよう心がける。
- ゲームなどに過度にのめり込まないよう注意を払う。
学校との連携
- 担任の先生やスクールカウンセラーと定期的に連絡を取り合う。
- 学校からの情報を子どもに伝え、つながりを保つ。
専門家や支援団体の活用
- カウンセラーや医療機関など、必要に応じて専門家のサポートを受ける。
- 地域の支援団体を調べ、利用できそうなところがあれば積極的に相談する。
段階的な社会参加
- 家族との外出や近所への買い物など、小さな社会参加の機会を作る。
- 子どものペースに合わせて、徐々に活動範囲を広げていく。
「不登校児童生徒への支援の在り方について」 宮城県教育委員会より引用
(https://www.pref.miyagi.jp/documents/1275/867837.pdf)
不登校は「甘え」「サボり」なのか?

結論から述べると、不登校は甘えではないと言えます。ひと昔前までは、子どもが多少のことで学校を休みたいと言っても、無理にでも学校に行かせるべきという考え方が主流でした。
そのため、不登校は単なる「甘え」や「サボり」とみなす人が多かったと思います。しかし、最近では児童・生徒の間にもSNSの普及が進み、昔に比べて人間関係が複雑化しています。また、社会の複雑化にも伴い、児童・生徒が学ぶべき学習量も増えています。これにより、以前と比べて子どもたちも学校生活にストレスを感じやすくなっていると言えます。
したがって、不登校を単なる「甘え」や「怠け」とみなす考え方は、現在では適切ではないとされています。むしろ、不登校は子どもが抱える何らかの問題や困難のサインであると捉えるべきなのです。
まとめ

前述したように、近年では小学・中学・高校のすべての学校種で不登校の数は増加しています。そして、その理由もいじめや教員との相性が合わないなどといった人間関係のトラブル、学習への無気力、家庭内の環境など様々です。
子ども一人一人にそれぞれ不登校の理由があるため、一概に学校復帰を強いたり、インターネット上の情報だけで判断するべきではありません。代わりに、家庭内で子どもと丁寧にコミュニケーションを取ったり、専門家に相談するなど、子どもに合った適切なアプローチを行うことが重要です。
また、日頃から子どもの自己肯定感が上がるようにポジティブな言葉がけをしたり、学校との連携を深めるなどすることで、不登校になることを防ぐことに繋がります。