新学習指導要領のキーワードとして耳にする「社会に開かれた教育課程」。
何となく分かっているようで意外と正確に分かっていなかったり、説明できなかったりする人が多いのではないでしょうか。
本記事では、そんな重要だけど意外と分かっていない「社会に開かれた教育課程」について、基本から分かりやすく丁寧に解説していきます。
社会に開かれた教育課程とは?
原文をそのまま引用
文部科学省の正式文書によると、以下のように説明されています。
(中々難しく、文量も多くなっていますので、次のセクションで要約をしています)
引用:幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)
かみ砕いて要約すると、、
上記の説明をかみ砕いて「社会に開かれた教育課程」の重要ポイントを解説していきます。
(教育ピックス編集部なりの要約になります。)
社会とつながる学校
グローバル化、AIの台頭をはじめ、現代の社会は日々急速に変化してるため、これからの子どもたちにはこの変化の中で生き抜くための力が必要です。
そのためには、学校がただ教科書から教えるだけではなく、地域や社会とつながりながら学ぶ必要があります。
学びの目標を社会と共有する
学校教育は子供たちが社会で役立つ資質や能力を育む場所です。
学校教育の目標は、学校だけでなく、社会全体で共有するべきです。
学校は学校、社会は社会と分断するのではなく、お互い目標を共有することが大切になってきます。
学びの場を広げる
学校の教育は教室の中だけでなく、地域や社会と連携して展開されるべきです。
例えば、地域の人々との交流や放課後の活動など、多様な学びの場を提供することが重要です。
学校の中で閉じた学びだけでは、社会で活躍するための資質能力を身に付けるには不十分といえるでしょう。
新しい時代に合った学び
未来の社会を創るために、子供たちが必要とする資質・能力を明確にし、それを育んでいく教育課程が求められます。
これには、教科を超えた広い視野と、社会の変化に柔軟に対応する力が必要です。
社会に出たら、文系・理系の分断などは関係なくなっていきます。
社会に開かれた「教育課程」に期待される効果
社会に開かれた教育課程は様々な効果をもたらすとされています。
ここでは子ども・学校・地域社会それぞれの視点から見ていきたいと思います。
子どもに期待される効果
① 学びの意義や目的意識の向上
学校で学ぶ内容が、地域課題や社会問題と結びつくことで子どもたちは、自分の学びが実際の社会や生活にどのように役立つかを実感できるようになります。
また、「なぜ学ぶのか」という問いに対する明確な答えを得ることもできます。
②主体性と自己効力感の向上
社会とのつながりを持つことで、自分自身が社会に貢献できる存在であるという自信を持つことができます。
学校の枠を超えた活動を通じて、自分の意見や行動が他者や社会に影響を与える経験をすることで自信を持つことができると考えられます。
学校における効果
①教育の質の向上
学校が社会との連携を深めることで、教育内容がより現実的で実践的なものになります。
学校独自の特色ある教育課程を編成することで、他校との差別化や魅力向上につながるでしょう。
②地域社会との信頼関係の構築
地域の人材や資源を活用することで、学校が地域コミュニティの中核的な役割を担えます。
地域から学校への関心や支援が高まり、教育環境がより充実すると考えられます。
地域社会における効果
①地域活性化
子どもたちが地域の課題に関心を持ち、解決策を提案することで、地域社会の活性化が見込まれます。
若い世代が地域に愛着を持つことで、地域の人口減少や高齢化への対策に貢献することができるでしょう。
②持続可能な地域づくり
地域住民と学校が一体となって活動することで、持続可能な地域社会の構築に寄与します。
地域課題の解決に若い力が加わることで、解決策の幅が広がります。
これらのように様々な観点からみても「社会に開かれた教育課程」は大きな影響をもたらすと考えられます。
社会に開かれた教育課程の実践例
ここで、文部科学省の公式資料に掲載されている事例を紹介していきます。
被災地での「ふるさと科」
平成23年の東日本大震災で津波による大きな被害を受けた大槌町。
震災から立ち上がり、ふるさとの将来を担う人材の育成を学校教育において目指すため、保護者や地域住民等が学校の運営に参画するコミュニティ・スクール(学校運営協議会を置く学校)を導入することになったそうです。
コミュニティスクールとは:
学校運営協議会を置く学校のことで、学校運営や学校への支援について、地域住民の代表が協議することを通して、学校と地域が一体となって子どもたちを育てることを目指します。
大槌町は、子供たちに「郷土への誇り」がもてるように、「社会の変化に柔軟に対応する力」や「将来への夢や希望を描き実現へ向けて努力する力」を身に付けさせることとしました。
また、2023年7月にも、大槌町コミュニティ・スクール事業として、以下の学習会が開催されています。(引用:大槌町HP)
地域創生「島・学・人プロジェクト」
人口減少や地域コミュニティ維持が課題の山口県周防大島町が、町唯一の県立高校である周防大島高校にコミュニティ・スクールを導入し、
地域や学校の課題解決を一層進め、将来の地域を支える人材を育成するという目標を、学校と地域が共有しました。
1年生は総合的な学習の時間に、2・3年生は独自教科「地域創生」の時間に、
島を学びの現場にして、島の魅力・良さを調査・発信したり、島の課題を知り、その解決策を考えたりする「島・学・人プロジェクト」に取り組んでいます。
社会に開かれた教育課程を支える制度とまとめ
上記でも紹介した通り、社会に開かれた教育課程を実現していくためには、コミュニティスクールや地域学校協働活動の一体的な推進が不可欠です。
「社会に開かれた教育課程」は、子どもたちが現実の社会で活躍できる力をつけるための考え方と言えるでしょう。
学校を中心として地域や町を作っていく取り組みは、学校・地域双方ともに時間もコストも掛かる取り組みになりますが、
これからの時代を生きる子どもたちにとっては非常に有意義な時間です。
今後、ますます社会に開かれた教育課程の事例が増えていくことを楽しみにしていきましょう!