レジリエンスとは、逆境や困難に直面したときにそれを乗り越える力を指す言葉で、心理学用語としても用いられます。
今回はそんなレジリエンスに関して、定義から育み方の例まで、詳細に解説します!
レジリエンスと映画ロッキー
映画を例にすると、「ロッキー」は、主人公ロッキー・バルボアの困難に対する持続力と回復力を描いた映画で、
これらの要素はレジリエンスと深く関連しています。
ロッキー・バルボアはその良い例で、彼は貧困、孤独、敗北、年齢、身体的制限などの困難に直面しますが、それらから立ち上がり、自身を超えることで挑戦を乗り越えます。
ロッキーは自身の困難な状況を受け入れ、それに対処するための戦略を開発します。
彼は自己鍛錬を行い、自分の強みを最大限に活用する方法を見つけます。
そして、彼は何度も打ちのめされますが、その都度立ち上がります。
これらの特性はレジリエンスの一部であり、ロッキーはその象徴的な例です。
また、「ロッキー」は人間が自身の困難を乗り越える際に必要なレジリエンスを育む要素も教えてくれます。
その中には、自分自身を信じること、目標を持つこと、努力を続けること、サポートシステム(ロッキーの場合はトレーナーのミッキーやパートナーのエイドリアン)を持つことなどが含まれます。
したがって、ロッキーの物語は、逆境に立ち向かい、自己改善を追求し、困難を克服するレジリエンスの重要性を示しています。
特に現代社会では、多様なストレスや変化に対応する力が求められており、このレジリエンスは教育の現場でも注目を浴びています。今回は、具体的な例を挙げながら、教育におけるレジリエンスの高め方について解説します。
レジリエンスの意義
教育でのレジリエンス育成は、個々の人間が持つリーダーシップ能力、キャリア自立力、ストレス対処力などに大きく関連しています。
ストレス耐性や傷つきにくさなどの要素を養いつつ、子どもたちの社会的な課題に対する対処能力を向上させることが期待されます。
レジリエンスの育成法
レジリエンスを育成するためには、さまざまな心構えが必要です。その中でも特に重要だと考えられるものをいくつか紹介します。
自己効力感の高める
子どものレジリエンス、つまり逆境に立ち向かい回復する力を高めるためには、自己効力感を高めることが重要です。
自己効力感とは
【困難にぶち当たっても乗り越えることができる】
【自分が現在の状況を変えることができる】
と信じられる能力を指します。
実際に、レジリエンス教育の研究では、「自分ならやればできる」という自己効力感が向上すると、レジリエンスも向上するという結果が得られています。
自己効力感を高める具体的な方法としては以下のものが挙げられます。
まず、「小さな目標の達成を繰り返す」ことです。子ども自身が設定した小さな目標を達成することで、「自分ならやればできる」という信念が育まれます。
次に、「お手本となる人を見習う」ことも有効です。成功体験を持つ人を見習うことで、自分も成功できるという信念が強まります。
また、「励まし」によっても自己効力感を高めることができます。親や教師からの肯定的なフィードバックは、子どもの自信を強化します。
最後に、「雰囲気を変える、気分転換をする」も重要です。新しい環境や体験は、新たな視点や解決策を見つける機会を提供します。
これらの方法を通じて、子どものレジリエンスを高めることが期待できます。
自尊感情を高める
子どものレジリエンスを高めるための自尊感情を高める方法は、以下のようなものがあります。
まず、レジリエンス教育が自尊感情や自己効力感を向上させることが示されています。
スキンシップを取る、子どもの話をしっかり聞いてあげる、温かい口調で返してあげるなど、子どもの気持ちに耳を傾けることがレジリエンスの基礎を作る重要な要素とされています。
次に、子どもたちが自分の特性や現状を把握し、自分で強い意思決定ができるようにすることが大切です。
また、全員が活動の目標を発表し、自己評価をするような活動も有効です。
さらに、相互評価の視点を明確にし、他の意見を尊重して、関連発言をした子どもを評価できるようにすることも重要です。
これにより、子どもたちが互いの良さを認め合う力が強化され、自尊感情が高まるでしょう[3]。
最後に、子どものレジリエンスを高める教育方法としては、
結果ではなく過程を褒める
他人と比較せずに褒める
スモールステップで目標達成を繰り返す
適度に助けつつも自立させる
などが挙げられます。
これらの方法を通じて、子ども自身が自分の価値を認識し、自尊感情を育むことができます。
思考パターンの変化
レジリエンスとは、逆境や困難な状況から立ち直る力のことを指します[6]。
子供のレジリエンスを高める方法の一つとして、思考パターンの変化があります。
具体的な例として、捉え方をサポートするというのがあげられます[7]。
たとえば、失敗体験や困難な状況に直面した時、それを否定的な出来事ととらえず、成長の機会や学びの経験ととらえるように子供に対する声かけを行うことです。
子供が問題に対して困難さばかりに焦点を当てがちな場合、親や教師が「それは大変だったね、でもその経験から何を学んだかな?」といった問いかけをすることで、
子供自身の思考の枠組みを変化させ、問題を解決するための新たな視点を提供することができます。
このように思考パターンをポジティブな方向に誘導することで、子供は逆境に強い心を育てることができるのです。
周囲とのつながり
こどものレジリエンスを高めるためには、周囲とのつながりが非常に重要です。
レジリエンスはストレスに負けず、自分がやりたいことをやる力とされています。
その力を育てる上で親の役割は大きく、子どもの話をしっかり聞いてあげる、温かい口調で返してあげるといった、子どもの気持ちに耳を傾けることが基盤となります。
その一方で、周囲の人々とのつながりも大切で、その人々の中には友人や教師など、親以外の大人が含まれます。
例えば、子ども泣きながら話かけてきた時や不機嫌になっていたときなど、子どもの感情に共感することが大切です。
教育現場での取り組み
三重県での取り組み
三重県では、現代の変化の激しさや不確実性に対抗するために、児童生徒のレジリエンスを高める学習プログラムが実施されています。
学習プログラムの実施前と実施後に、児童生徒にアンケートを実施し、レジリエンスの変化を検証します。
また、モデル校での取組の成果と課題を検証し、より効果的に活用できるよう必要な改善を加えたうえで、令和4年度以降のモデル校での取組につなげるとともに、他校への普及を進めます。
この学習プログラムを通じて、児童生徒がレジリエンスを高め、困難な状況にあっても、その困難を乗り越え、成長していくことが期待されています。
海外での取り組み
レジリエンス教育は、日本だけでなく、海外でも取り組まれています。以下に、一部の国々でのレジリエンス教育の実施例を説明します。
アメリカ
アメリカでは、学校における「Social Emotional Learning (SEL)」という教育プログラムが盛んに行われています。
SELは、生徒が自分自身や他人の感情を理解し、目標設定や問題解決、コミュニケーションといった社会的、感情的なスキルを育むことを目指しています。
SELプログラムは、生徒が困難に遭遇した時に適切に対処し、自己認識、自己管理、社会的認識、人間関係のスキル、適応的な決定をする力を育むための方法論であり、レジリエンスを育む教育と言えます。
オーストラリア
オーストラリアでは、「Beyond Blue」などの組織がレジリエンス教育を推進しています。
このプログラムは、精神的な健康とレジリエンスを強化することを目指しており、児童や若者が自己認識、共感、問題解決、ストレス管理、情緒の制御などの技術を学ぶことを促しています。
イギリス
イギリスでは、「Positive Education」または「Character Education」と呼ばれる教育方法が注目されています。
これは従来の学術的な教育に加えて、生徒が充実した生活を送るためのスキルを育むためのアプローチで、レジリエンスをはじめとするさまざまなキャラクタースキルを育むことを目指しています
以上のように、国や地域によってレジリエンス教育の具体的な実施形態は異なりますが、その核となる目標は、児童や若者が困難に適応し、それを乗り越え、成長する力を育むことにあります。
まとめ
教育におけるレジリエンスの高め方は、多様な方法があります。しかし、その中心には学生一人一人が自分自身を信じ、困難に立ち向かう力を育むことがあります。
具体的な取り組みとして、自己効力感の強化、自尊感情の強化、思考パターンの変化、そして周囲とのつながりを深めることが挙げられます。これらの方法を通じて、教育の現場でレジリエンスを高めることができるでしょう。