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【詳しく解説】レッジョ・エミリア教育とは?特徴とメリット・デメリット(レッジョ・エミリア・アプローチ)〜『100の言葉』~

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「レッジョ・エミリア教育」または「レッジョ・エミリア・アプローチ」を知っていますか?

この教育方法は今、世界で最も注目されている幼児教育のアプローチです。どうして高く評価されているのか、一体どんな教育方法なのか、わかりやすく解説していきます!

Reggio Emilia – July 2017, Italy: The Central Square of Reggio Emilia (Camillo Prampolini) Old medieval architecture in the historic part of the city
目次

レッジョ・エミリア教育とは?

「レッジョ・エミリア教育」とは、「レッジョ・エミリア・アプローチ」とも称される、北イタリアの都市レッジョ・エミリア市発祥の乳幼児の教育方法です。

レッジョ・エミリア市はイタリアの中で最も豊潤な地域として知られる、エミリア・ロマーニャ地方に位置する人口17万人ほどの小都市です。

この、小さな都市で始まった教育方法は、1990年代にアメリカ版ニューズウィーク誌に世界で ”最も先進的な乳幼児教育” として取り上げられたことで、世界中から高く評価され注目されるようになりました。

レッジョ・エミリア・アプローチの一番の特徴は、「子ども中心の探求型教育」であるということ。

子ども一人ひとりがもつ可能性を尊重し、子ども自身の興味や考えを大切にしながら学びの場をつくり、想像力や表現力を育むことを目的とした教育アプローチです。

レッジョ・エミリア・アプローチの始まり

レッジョ・エミリア・アプローチは、第二次世界大戦後に「戦争の過ちと悲劇を繰り返さない人間を育てよう」と、国家ではなく街が主体となって、子どものための学校を作ったことで始まりました。

その際に思想的な中心となったのが、地元の教員であった教育者で心理学者であったローリス・マラグッツィ氏(Loris Malaguzzi)です。

彼の掲げた教育理念は「子どもたちの100の言葉」として残されています。少し長いのですが、以下にその邦訳を紹介します。

「冗談じゃない。百のものはここにある。」

子どもは 百のものでつくられている。

子どもは

百の言葉を

百の手を

百の思いを

百の考え方を

百の遊び方や話し方を持っている。

百、何もかもが百。

聞き方も

驚き方も愛し方も

理解し歌う時の歓びも百。

発見すべき世界も百。

夢見る世界も百。

子どもは百の言葉をもっている。

(ほかにもいろいろ百、百、百)

けれども、その九十九は奪われる。

学校も文化も

頭と身体を分け

こう教える。

手を使わないで考えなさい。

頭を使わないでやりなさい。

話をしないで聴きなさい。

楽しまないで理解しなさい。

愛したり驚いたりするのは

イースターとクリスマスのときだけにしなさい。

こうも教える。

すでにある世界を発見しなさい。

そして百の世界から

九十九を奪ってしまう。

こうも教える。

遊びと仕事

現実とファンタジー

科学と発明

空と大地

理性と夢

これらはみんな

ともにあることはできないんだよと。

つまり、こう教える。

百のものはないと。

子どもは答える。

冗談じゃない。百のものはここにある。

                                

―ローリス・マラグッツィ『子どもたちの100の言葉』(訳:佐藤学)

この詩の中で当時の教育は、子どもから「九十九を奪う」もの、つまりそれぞれの価値観や個性などの無限の可能性を奪ってしまうものであるとされています。第二次世界大戦当時の教育は「子どもは不完全で何もできない存在であり、大人はたった一つの『正解』を教え込まなければならない」と考えるものでした。

ですから、レッジョ・エミリアで始まった教育では「子どもは生まれながらにして無限の可能性を持っている」と考え、それぞれの生まれ持った個性や能力、考え方や価値観などを奪わずに伸ばしていくことを大切にしているのです。

『子どもたちの100の言葉 レッジョ・エミリアの幼児教育実践記録』

レッジョ・チルドレン(著)

ワタリウム美術館(編)

日東書院本社

2012年

レッジョ・エミリア・アプローチの【2つの特徴】

レッジョ・エミリアと日本を繋ぐ機関であるJIREAはレッジョ・エミリア・アプローチの特徴は「共同性」「創造性」であると紹介しています。

そこで、「共同性」と「創造性」がそれぞれどのようなものなのか、以下に詳しく解説していきます。

【共同性】

「共同性」とは、子どもたちが地域のコミュニティーに、一人の「市民」として主体的に参加することを重視するということです。

レッジョ・エミリアでは「教育はすべての子どもの権利であり、コミュニティの責任である」と定義されています。

そのため、レッジョ・エミリアでの学びは地域の生活と密接に関係しており、子どもたちが地域社会の一員として主体的に学ぶ、豊かな保育がなされています。

子どもは保育者だけでなく、街のたくさんの人と関わりながら、学び、成長していきます。

例えば、活動の中で子どもたちは地域のあちこちを見学に訪れたり、活動のために必要な材料を地域のリサイクルショップからもらってきたりします。

教育は地域全体の責務であると考え、地域全体で子どもたちの学びの場を作っているのです。

【創造性】

レッジョ・エミリアで学ぶ子どもたちは、決められたカリキュラムをこなすのではなく、少人数のチームで興味・関心に沿った内容を深く探求していく「プロジェクト活動」呼ばれる活動を行います。「プロジェクト活動」に関しては、次の章で詳しく解説します。

日常に関連したことをきっかけに興味をもったことについて、納得いくまで多角的に深掘りしていく活動はとても創造的です。

また、この活動は時間が決められておらず、週単位や月単位で行われます。活動の内容によっては、時には一年をかけた活動になることもあるそうです。

このように、街全体と関わって主体的な活動を行う「レッジョ・エミリア・アプローチ」の保育環境や子どもたちの様子は、創造的で美しく、保育・教育関係者のみならず、まちづくりの観点からも、高く評価され、多くの人を惹きつけ注目されています。

レッジョ・エミリア教育の特徴的な【3つの要素】

続いて、日本の一般的な幼児教育とレッジョ・エミリア・アプローチの異なるポイントを3つの要素から解説します。

1, ”芸術(art)”を通じた学び

レッジョ・エミリア・アプローチでは、子どもたち、保育者、アートを専門的に学んだアトリエリスタなど、関係する人全てが、アートを通じて主体的に学びあいます。

「アート」と言っても、芸術家になるために技術や感性を磨くことや素晴らしい作品を作ることが目的ではありません。

創造的な体験を通じて、子どもたちは自ら考える力他者と協働する力表現力などさまざまな能力を伸ばし、自身や他者、世界に対する認識を深めていきます。

アートを通じた教育は、子どもたちの表現、探求、理解の手段として非常に重視されているのです。

また、アートに取り組む環境にも特徴があります。

レッジョ・エミリアの学校には、教育の専門家「ペタゴジスタ」アートを専門的に学んだ「アトリエリスタ」がいます。アトリエリスタはアートを子どもたちに「教える」ことはせず、子どもたちのサポートを行います。

さらに、アートに利用する材料も多岐に渡ります。画用紙やクレヨンはもちろん、土や小枝、貝殻、水、雪、空き箱、缶、壊れたおもちゃ…身近にあるものはなんでも利用します。

さまざまな材質に触れ、多くのことに気がつき、世界を認識していく過程を大切にしているのです。

2, 子ども主体の ”プロジェクト活動”

レッジョ・エミリア・アプローチのもう一つの特徴が「プロジェクト活動」です。

プロジェクト活動とは、子どもたちが4〜5人の少人数のグループに分かれて、話し合いながら自主的に活動を進めていくものです。

保育者も一緒に話し合いに参加し、対話を重ねますが「教える」ことはしません。プロジェクト活動に決まったゴールはなく、対話の中で生まれたアイディアを実践していくことで進めていきます。

また、プロジェクトの期間も決まっておらず、すぐに終わる場合もあれば数週間、数ヶ月続く場合もあります。子どもたちは納得いくまで、一つのことを多角的に深掘りした活動をすることができます。

もちろん、子どもが主体と言っても、保育者は子どもをただ見守っているだけではありません。

1日のはじめには子どもたちが興味を持って「プロジェクト活動」に参加していくためのいくつかのテーマ(教室に素敵な花を用意したり、ゲームの大会を提案したり…)を用意して発表し、丁寧な導入を行います。

活動の最中にはさまざまなきっかけを与えて、子どもたちと共に学びながら、対話を重ねて学びを豊かに広げていきます。

3, ドキュメンテーションによる記録

レッジョ・エミリア・アプローチでは、「結果」よりも「過程」を重視します。

そのため、大切になるのが活動の「過程」を記録したドキュメンテーションの作成です。

子どもたちがどのような会話をして、何に気づき、何を不思議に思ったのか。

子どもたちの毎日の会話や発言、行動を保育者は細かく写真・動画・スケッチ・メモなどで記録します。そして、子どもたち自身や保護者、または地域の人々と一緒に振り返りを行います。

レッジョ・エミリア教育の【メリットとデメリット】を紹介

レッジョ・エミリア・アプローチの導入には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

メリットとデメリットをそれぞれ3つ、紹介します。

メリット

子どもの興味を大切にするアプローチ

レッジョ・エミリア・アプローチでは、子どもたちの興味や好奇心が学びの中心となります。

このため、学ぶ過程が子どもたちにとって意味のあるものとなり、自然と学びへのモチベーションが高まります。

興味を持ったテーマに対する深い探求やリサーチを行うことで、自主性や独自の思考力を育む基盤が築かれるのです。

自分を「表現」できるようになる

レッジョ・エミリア・アプローチでは『子どもたちの100の言葉』にあるように、一人ひとりの個性やそれぞれ違った価値観、意思、アイディアを尊重します。

そして、絵画、音楽、彫刻、演劇など、さまざまなアートの手段を通して自己表現することが奨励されます。

そのため、子どもたちは自分の感情や考えを自由かつ豊かに表現する力を身につけていくことができます。

「協働」できる子どもになる

レッジョ・エミリア・アプローチは、学びを共有するプロセスとして、家族や地域社会との連携を重視します。

この協働の中で、子どもたちは他者とのコミュニケーション能力共感性を培うとともに、自分たちの属するコミュニティをより深く理解することができるようになります。

また、プロジェクト活動では、子どもたちが話し合いの中で活動の内容を決定します。

そのため、自分のやりたいことや考えを伝えたり、相手の主張を聞いたりする協調性や、説明力、交渉力など人と関わる能力を育むことができます。

デメリット

教師の質の確保が難しい

レッジョ・エミリア・アプローチの実施には、専門的な研修を受けた教師が必要です。

子どもたちの興味・関心を引き出しながら、豊かで価値のある学びに繋げられるテーマの準備やきっかけづくりが求められます。

また、アートを専門的に学び、子どもたちの学びや表現をサポートする「アトリエリスタ」の確保も必要です。

資源や環境の確保が難しい

さまざまな材料を使い、子どもたちの自由な発想に基づいてプロジェクトを進めるにあたって、適切な環境、教材、資材を整えることが必要です。

また、家族や地域社会との継続的な連携を重視するため、関与する大人たちの深い理解とコミットメントが求められます。

これらの要素が欠けると、レッジョ・エミリア・アプローチの利点を十分に活かすことが難しくなる場合があります。

標準的な教育カリキュラムとの”ズレ”が生じる可能性がある

このアプローチは子ども中心の学びを重視するため、標準的な教育カリキュラムや評価基準とは異なるアプローチを取ります。

また、日本においてレッジョ・エミリア・アプローチを取り入れている園はまだ少なく、小学校とは連携できていないのが現状です。

これにより、一般的な学校教育への移行時に適応の課題が生じる可能性があります。

まとめ

この記事では、レッジョ・エミリア・アプローチの起源や特徴、メリット・デメリットなどを解説しました。

イタリアの小さな街で始まった子どもが中心の教育方法、レッジョ・エミリア・アプローチは、子ども自身が多くの人と関わりながら自ら感じ、自ら考え、他者と協働し、表現することが特徴です。

変化が激しく将来の予測が困難な今の時代。

子どもたちの求められることは、このような「ゴールのない問題に対して、仲間と一緒に向き合い、自分の頭で考え、行動する力」なのではないでしょうか。

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