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【新課程】歴史総合とは?導入の狙いや変化する歴史教育と未来

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2022年度から全国の公立高校にて施行された歴史総合について、具体的にどう変化したのかご存知でしょうか。

どうして歴史総合として名前を変えたのか、そもそも歴史総合とは何か?今回の記事ではその役割と変更の理由、これから歴史教育はどう変わっていくのか見ていきます。

目次

歴史総合とは何か?

科目の概要

「近現代の歴史の変化に関わる諸事象について,
世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉え,
資料を活用しながら歴史の学び方を習得し,
現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察,構想する科目」

参考:(高等学校指導要領解説地理歴史編)
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/11/22/1407073_03_2_2.pdf

これが高等学校学習指導要領解説に載っている歴史総合の概要です。

つまり、現在の社会に直接的に影響している歴史を学ぶことが歴史総合となります。

特徴としてはそれまで日本史Aと世界史Aで分断されていたものを統合した形になりますが、その分授業速度は駆け足となり、内容も重要部分をかいつまんで話す形となります。

重要視されている3つのポイント

歴史総合において重要視されるのが以下の3点です。

①産業社会と国民国家の形成を背景として,人々の生活や社会の在り方が変化したこと。

②政治,外交,経済,思想や文化などの様々な面で国際的な結び付きが強まり,国家間の関係性が変化したことや個人や集団の社会参加が拡大したことを背景として,人々の生活や社会の在り方が変化したこと。

③科学技術の革新を背景に人・商品・資本・情報等が国境を越えて一層流動するようになり,人々の生活や社会の在り方が変化したこと。」

これらが表すのは、

近代化
国際秩序の変化や大衆化
グローバル化

です。

近代化につながりうる要素、及び時代が転換期に入ったと思われる19世紀からの日本と世界の歴史概要を教科書は収録することとなります。

歴史総合と世界史は違うのか?

歴史総合で学ぶ内容

歴史総合は近現代の政治・経済について学びます。

それは歴史総合が社会的事象の解釈を時期と推移に着目して捉え、現在につながる歴史事象の解釈が今後の社会において重要視されるからです。

しかし歴史は政治・経済のみで構成されているわけではありません。

一つの歴史事象を取り扱うにおいても、当時の人々が何を考え、そうした行動に移したのか、様々な観点から見なければいけないからです。

それには文化史・思想史など人間の内面的な歴史が必要不可欠なのです。そうでなければ歴史は無味乾燥したものになってしまいます。

現在の歴史総合では文化史、思想史などの記述が少ない教科書が大半を占めています。

従来の世界史A、日本史Aにおいても文化史および思想史の記述が希薄であることや、授業で取り扱わない場合が多く、その実態はあまり変化が見られません。

重視される資料の読み取り

また、歴史総合は資料の読み取りを重要視しています。複数の資料の読み取りを行い、歴史の社会的事象を多くの観点から読み解くことで歴史事象の批判的な読み取り、疑問と関心をもつことを理想型としています。

対して世界史探究は文化史及び思想史はもちろんのこと、それらに結びつくように政治経済のトピックスを展開していきます。

人類誕生から文明社会の発達に始まり、歴史を一連の流れとして捉え、地球上における諸地域の歴史的特性とその展開を学びます。これによる思考力と表現力および判断力を養うことを理想型としています。

そのため歴史総合と世界史探究では両者の特性から違いが見て取れるのです。

歴史総合と歴史探究の意図する目的の違いもここに現れています。

歴史総合を学ぶことで見える歴史教育

歴史総合が導入された意図としては、背景には2018年に公示された高等学校学習指導要領の変更が挙げられるでしょう。

近年の人工知能の進化や成人年齢の引き下げを踏まえ、高校生の一人一人の自主性がより強く重要視されるようになりました。そこから生じる歴史教育の自主学習の必要性は前述の通りです。

一概にはいえませんが、一般的な歴史教育として歴史総合は従来のものと代わり映えのしないものとなってしまっています。

歴史教育の改善に努める小川氏は歴史学研究記念大会のシンポジウムにてこう述べています。

歴史教育には三層の基層が存在し、
「一層:事件・事実の列挙
二層:歴史の解釈
三層:歴史を素材として人間のあり方や政治のあり方、自分の生き方について歴史批評を行う」

参考:「高校世界史教科書におけるアメリカ合衆国–人種・エスニシティ・人の移動史を中心に」73頁8〜10行

歴史教育の基層のうち、二層までのみ現在の日本の教科書ではアプローチできないのです。仮に高校生が歴史を学びたいと思うのであれば授業外での自主的な学びが必要不可欠となります。

授業では大学入試に備えた知識の提示及び基層の一層である事件・事実の列挙と二層の歴史の解釈のみに留まっている様が歴史総合の教科書にも如実に表れています。

高等学校の教育が大学入試に直結し、大学入試に備える知識を蓄えるのが現在の高等学校歴史教育です。

そういった意味では、歴史総合がどのように作用するかは2022年度に入学した高校生が大学入試に臨む2025年度入試から明らかとなっていくかもしれません。

これからの歴史教育

大学入試制度の見直しを行い、共通テストを導入したことについて、記述式の回答が増加することが変更当時の高校生たちの恐怖の対象でした。

しかし共通テストの実態はマーク式のまま変化していません。マーク式のままでは歴史教科は暗記科目のままであり、自主的な思考を求める指導要領には反しています。

対して指導要領には自主的な学びを促進するべく問いをもちかける授業内容の作成を提示しています。

教科書の内容についても、問いかけを行うものはかなり少ないのが現状です。自主的な学びを促進するのであれば、課題等の外的なアプローチによる歴史教育など、様々な方法を模索していくことになるでしょう。

まだまだ始まったばかりの歴史総合、これからの歴史教育にどのような影響を見せるのか楽しみですね。

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