GRIT(グリット)とは?育むための具体的な方法も解説
学校での学びの目的は、単に知識や技能を身につけるだけではありません。生きる力、成功への鍵となる「GRIT(やり抜く力)」を育むことも、教育の重要な目的です。
GRITとは、困難に遭遇しても諦めず、目標に向かって粘り強く努力し続ける力のことです(詳細は後述)。
この特性は、人生全般において成功を左右する要素と言われています。
では、学校はどのようにして生徒たちのGRITを育てることができるのでしょうか。
本記事では、教師や学校が取り組むべき具体的な方法や環境づくりを紹介します。
GRIT(やり抜く力)とは?
GRITの定義を分かりやすく解説
Grit(グリット)とは、「1つのことに情熱を注ぎ込み、継続的に粘り強く努力し、最後までやり遂げる資質や能力」を意味します。
GRITは以下の4つの英単語の頭文字をとったものです。
Guts:度胸や勇気。困難なことに立ち向かう力
Resilience:うまくいかないことがあっても粘り強く取り組む
Initiative:自発的に目標を設定する
Tenacity:最後の最後までやり遂げる粘り強さ
参考書籍:「GRIT やり抜く力」アンジェラ・ダックワース 著
GRITが高い人の特徴
GRITが高い人の特徴として例えば以下のようなものがあります。
- 長期的目標に対する情熱:GRITが高い人は、長期的な目標に対して情熱を持ち続け、粘り強く取り組むことができます。
- “スタミナ”:短距離走のような爆発的な力や賢さではなく、マラソンランナーのごとく継続して粘り強く取り組むことができます。
- 小さな成功体験:小さな成功体験を通じて自己肯定感や自己効力感を高め、さらなる成功に向かって進むことができます
測定方法
GRITの高さは、「グリット・スケール」という指標で測定することができます。
グリット・スケールは10個の項目から構成され、自分が当てはまると思うスケールの数字をチェックし、その合計を10で割った数字(グリット・スコア)で表現されます。
最高点は5点で、グリット・スコアが高いほどグリットが高いとされています。
[参考:「日本語版グリット尺度の作成および信頼性・妥当性の検討 (竹橋 洋毅/関西福祉科学大学 樋口 収/明治大学 尾崎 由佳/東洋大学 渡辺 匠/北海道教育大学 豊沢純子/大阪教育大学)」]
学校でGRITを育むための3つの方法
今回は、学校でGRITを育むための以下の3つの方法について、具体的な内容まで掘り下げて紹介します。
- 目標設定のサポート
- 学級適応・スクールモラール・ソーシャルスキルの向上
- 教育的相互作用の促進
目標設定のサポート
長期的な目標を達成できるGRITを育成するためには、児童生徒が自分の目標を明確に設定し、それを達成するためのプロセスを理解できるようにサポートすることが重要です。[参考:日本の教育分野におけるGrit(やり抜く力)に関する研究の展望 -心理尺度と発達段階に着目して-]。
- 目標設定の手順を教える
児童生徒に具体的な目標設定の手順を教え、短期的な目標と長期的な目標の違いや、目標を達成するために必要なステップを理解させます。
「目標には具体的な数値を持たせて、後から振り返りがしやすいようにするのがよい」など、目標設定のコツなどを紹介し、自分の目標に対して明確で達成可能な計画を立てられるようサポートします。 - 自己評価・振り返りの促進
児童生徒に自分自身の進捗や成果を評価し、振り返る機会を設けることで、目標に対する意識を高めることができます。
定期的に進捗状況を共有し、達成できた点や改善が必要な点を見つけることで、自分の成長を実感し、GRITを育てることができます。 - メンタリング・指導
教師や先輩、専門家などが児童生徒にメンタリングや指導を行い、目標設定や達成のための具体的な方法やノウハウを提供します。
適切なアドバイスやフィードバックによって、児童生徒の自己効力感が向上し、やり抜く力が強化されることが期待できます。 - 目標に対する情熱を維持する環境作り
学校や家庭で目標に対する情熱を維持できる環境を作ることが重要です。
児童生徒が自分の目標や興味に関連する活動に参加しやすい環境を整え、目標に向かって取り組む意欲を維持できるようサポートします。
学級適応・スクールモラール・ソーシャルスキルの向上
GRITは学級適応やスクールモラール、ソーシャルスキルとも関連があるとされています[参考:小学生の Grit(やり抜く力)と学級適応・スクールモラール・ソーシャルスキルとの関連の検討]。
これらの要素を向上させることで、児童生徒のやり抜く力も向上させることができます。
- クラス内のコミュニケーションを促進する
クラス内での積極的なコミュニケーションを促し、児童生徒同士の信頼関係や友情を築くことで、学級適応が向上します。
グループワークやディスカッションなど、児童生徒が互いに意見を交換し合う活動を取り入れることが有効です。 - 学校全体での協力と連携を強化する
教師や職員間で情報共有や連携を強化し、学校全体での一貫した指導方針を確立することで、スクールモラールが向上します。
また、児童生徒にも学校行事やプロジェクトなどで協力する機会を提供し、学校全体で連携を重視する雰囲気を作ります。 - ソーシャルスキルの習得をサポートする
児童生徒に対話やリスニング、問題解決、協力などのソーシャルスキルを教え、実践の機会を提供することで、ソーシャルスキルが向上します。
これにより、児童生徒は他者と協力しながら目標に向かって努力することが容易になり、GRITも向上します。 - 教師のサポートと適切な指導
教師が児童生徒の学習や活動に対して適切なサポートと指導を行い、児童生徒の自己肯定感や自尊心を高めることで、学級適応やスクールモラール、ソーシャルスキルが向上します。
教師は個々の児童生徒に対して理解と共感を示し、成長をサポートする役割を担います。 - 児童生徒の意見や感想を尊重する
児童生徒の意見や感想を尊重し、それを学校やクラスの運営に反映させることで、児童生徒の自主性や責任感が育ち、学級適応やスクールモラール、ソーシャルスキルが向上します。
意見交換会やアンケート調査などを通じて、児童生徒の声を聞く機会を設け、彼らの意見を尊重する環境を作ります。
教育的相互作用の促進
教育的相互作用を積極的に取り入れることで、GRITが高い児童生徒がさらに学級集団内で積極的に参加する傾向があるとされています[参考:小学生のGrit(やり抜く力)と学級集団内の教育的相互作用との関連]。
教育者は児童生徒の間で協力や共感を促すような活動を取り入れることが重要です。
- グループワークやプロジェクト活動の導入
グループワークやプロジェクト活動を通じて、児童生徒は協力し合い、共同で課題解決を行います。
これにより、お互いの意見や視点を尊重し合う姿勢や協力する能力が養われ、教育的相互作用が向上します。 - ペア学習や相互評価の活用
児童生徒同士でペアを組み、学習内容を教え合ったり、お互いの作品や発表を評価し合う活動を行うことで、相互理解や共感力が育ちます。
また、他者の意見を尊重し、客観的な視点で自分自身を評価できるようになります。 - ディスカッションやディベートの実施
ディスカッションやディベートを行うことで、児童生徒は他者の意見に耳を傾け、自分の意見を明確に表現する能力が向上します。
異なる意見や視点を尊重することが求められるため、教育的相互作用が促進されます。 - ロールプレイやシミュレーションゲームの活用
児童生徒が異なる役割を担い、仮想の状況で対話や問題解決を行うロールプレイやシミュレーションゲームを取り入れることで、相互理解や協力の重要性が学べます。これにより、教育的相互作用が向上します。
まとめ
学校において児童生徒のGRITを育む方法として、
- 目標設定のサポート
- 学級適応・スクールモラール・ソーシャルスキルの向上
- 教育的相互作用の促進
の3つを紹介しました。
これらの方法を通じて、生徒たちが困難に立ち向かい、目標に向かって粘り強く努力する力を身につけることができます。
学校教育は、未来を担う子どもたちにGRITを育む場として大きな役割を果たしていくことでしょう。